ヒトツナギ
地元と社員と歩む文具のその先へ|オフィスベンダー

今回は、仙台市と埼玉県に文房具専門店を展開する株式会社オフィスベンダーの代表取締役社長・白木二郎さん。家業を継ぐまでの葛藤や、コロナ禍での舵取り、スタッフとの関係性、そして未来への構想まで、たっぷりと語っていただきました。ぜひ最後までご覧ください。

【プロフィール】
株式会社オフィスベンダー 代表取締役社長 白木二郎
宮城県出身。文具業界に従事する家業に生まれ育ち、一度は別のキャリアを選ぶも、2015年に実家へ戻り、2020年より現職。スタッフの声を大切にしながら、地域と共に歩む文具専門店を目指して奮闘中。

祖父のリアカー行商から始まった文具屋の歴史

ーーまずは、御社の成り立ちと現在の事業について教えてください。

当社は仙台市と埼玉県に6店舗を展開する文具専門店です。小売店のほか、法人営業と通販の三本柱で事業を運営しています。
ルーツは、祖父がリアカーを引いて文具を売り歩いていた時代。後に仙台市に店舗を構え、「白木屋文房具店」として親しまれるようになりました。

その後は私の父が引き継ぎ、アメリカ視察で出会った倉庫型の大型文具店に衝撃を受け「このままでは町の文具店は淘汰される」と危機感を持った父が、新業態として立ち上げたのが「オフィスベンダー」でした。大量仕入れ・低価格を武器に、郊外型店舗として業界内でも先進的な存在になりました。

家業は継がないつもりだった。それでも戻ってきた理由

ーーご自身は家業を継ぐおつもりだったのでしょうか?

正直、あまり考えていませんでした。私は次男で、兄がいたこともあり、「いずれ兄が継ぐだろう」と思っていました。東京の大学に進学し、「自分は東京で自由に生きていくんだ」と決めていたほどです。

しかし、大学を卒業する頃、兄も東京で別の仕事をしており、「あれ、誰が継ぐんだ?」という空気に。
父の勧めで文具メーカーに入社しましたが、営業職が肌に合わず、1年も経たずに退職。今思えば、父が頭を下げて紹介してくれた先だったので、途中で辞めるのは本当に申し訳なかったですね。

それを機に、「家業は継がない」という意識が強くなり、会計事務所に入って税理士を目指す道を選びました。東京で家庭を持ち、将来は都内でやっていこうと考えていた矢先、父から「会社の財務を見ていた役員が退任する」と連絡がありました。

戻るかどうか迷いましたが、ちょうど子どもが幼稚園に入るタイミングでもあり、妻に相談したところ「いいんじゃない」と後押ししてくれて、2015年に地元へ戻る決断をしました。

コロナ禍とともに始まった社長としての船出

ーー社長に就任されたのは、ちょうどコロナ禍の始まりだったそうですね。

2020年1月に社長に就任し、その直後に仙台でも感染者が出て、まさに波乱のスタートでした。来店客数は激減し、従来の販促施策も通用しない状況に。「社長としてどう立て直すか」を問われる毎日でした。

幸い、当時はマスクや消毒液などの需要があり、物販でなんとか利益を確保しました。ただ、それも一時的。翌年以降は売上が大きく落ち込み、本格的な立て直しが必要になりました。

それまでのビジネスモデルを見直し、「価格で勝負するのではなく、オフィスベンダーでしか得られない価値をどう提供するか」が大きな課題になったのです。

来店の目的を“価格”から“体験”へ

ーー価格以外の強みづくりとして、どのような取り組みをされていますか?

オリジナル商品開発に注力しています。中でも、コロナ禍で生まれた「ジャスチャーム付ボールペン」は大きな転機でした。
「ジャス」は仙台弁で“ジャージ”の意味。店長たちとの会議でアイデアが出て、各店舗ごとに違うカラーを展開する“文具戦隊”方式で販売。全部集めるには全店を回る必要があり、地域を巻き込んだちょっとしたブームになりました。

そこから地元企業とのコラボにも広がり、ローカル商品を文具化することで「ここでしか買えない価値」を提供できるようになりました。単なる道具ではなく、“文具を通じた地域体験”を届けることが私たちの目指すところです。

ボトムアップ型の組織で、スタッフと共に進化する

ーー会社の組織づくりについて、どのような工夫をされていますか?

「みんなで作る会社」にしたいと思っています。スタッフが主役になれるよう、販促アイデアの社内コンペを実施したり、現場の声を吸い上げて商品企画に反映したりする仕組みを整えました。

自分が現場に立たない分、信頼して任せる。そして、良い取り組みにはちゃんと称賛する。そうした関係性の中で、会社全体が少しずつ変わってきたと感じています。

社員からもらった「社長の一品」

ーー嬉しかったエピソードはありますか?

社長就任時、スタッフからプレゼントをいただいたことがとても印象に残っています。箱を開けると中には、カシオ製の高性能電卓。それも、私の名前入り。価格も3万円以上するもので、「これからの仕事に使ってください」という想いが込められていたんです。

最初はもったいなくて使えなかったのですが、「せっかく贈ったのだから、ぜひ使ってください」と言われて、今では会議でも必ず使う“相棒”になっています。

このエピソードは地元紙の「社長の一品」という特集にも掲載され、あらためてスタッフの温かさに感動しました。

社員が誇れる会社にしたい

ーー将来の展望や、会社の目指す姿について教えてください。

現在「杜の文具博」や、「駅の文具祭り」などのイベントを通じて、地元との接点を広げています。今後も「文具を買う場」ではなく、「文具を楽しむ場」としての価値を高めていきたいと考えています。さらに、文具以外の新しい分野にも挑戦することで、会社としての柱を増やし、より強い組織にしていきたいと思っています。

目指すのは、「ちゃんと売上・利益を出して、働いていて幸せだと言ってもらえる会社」。そのためには、会社をもっと大きくし、収益構造を強化する必要があります。
父が40代半ばでこの会社をゼロから立ち上げたことを思えば、自分もまだまだやれると感じています。

「ありがとう」と言える大人でありたい

ーー最後に、経営において大切にされている価値観を教えてください。

「謙虚さ」と「素直さ」を忘れないこと。これは、社長になってからもずっと意識していることです。
社内であっても、家庭でも、何かしてもらったら「ありがとう」、間違ったら「ごめん」ときちんと伝える。言葉にすることが信頼関係を作ると思っています。

人として当たり前のことですが、立場が変わると忘れがちになる。だからこそ、意識的に続けていきたいですね。

INFORMATION
株式会社オフィスベンダー
https://www.officevendor.co.jp

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