ヒトツナギ
「香り」を大切に、心に残る時間を|フランス菓子 aisé(エズ)

上質な素材と香りのハーモニーを大切にしたフランス菓子を提供する「フランス菓子 aisé(エズ)」。宮城県仙台市泉区加茂にあるこの小さなパティスリーには、こだわりの詰まったケーキや焼き菓子が並びます。今回は、代表の田邊さんに、独立までの経緯やフランス菓子への想い、今後の展望についてお話を伺いました。

【プロフィール】
フランス菓子 aisé(エズ)代表 田邊 ともみ
宮城県出身。宮城県の県北、美里町で育ち、フランス菓子の世界に魅了される。独学や現場での経験を積み、フランスでの修行を経て、地元宮城で「フランス菓子 aisé(エズ)」を開業。香りを重視したケーキ作りと、心に残るギフトを提供することで、多くの人に喜ばれている。

素材の香りを最大限に生かすお菓子作り

ーーまず、お店について簡単に教えてください。

「フランス菓子 aisé(エズ)」は、フランス菓子をベースにしたケーキや焼き菓子を提供する小さなパティスリーです。素材の香りを大切にし、シンプルでありながら華やかさのあるケーキを目指しています。また、大切な人へのギフトとして選んでもらえるよう、ラッピングやデザインにもこだわっています。

ーーお菓子作りの世界に入ったきっかけは?

元々はお菓子作りが好きでしたが、最初は別な道を歩んでました。高校生の頃から製菓の道に進みたいと考えていましたが、当時、女性が洋菓子職人として働くことはまだ一般的ではなく、特に田舎では「女性がそういう仕事をするの?」という空気がありました。親も「安定した職業に就いてほしい」という考えを持っており、製菓学校への進学は認めてもらえませんでした。

さらに、宮城県内には当時、製菓専門学校がなく、本格的に学ぶには東京へ行くしかありませんでした。経済的な負担や親の反対もあり、一度は別の道を選びましたが、それでもお菓子作りへの想いを断ち切ることはできませんでした。

最初はデパートの実演販売や洋菓子店での仕事を通じて、技術を学びながらスキルを磨いていきました。学ぶ機会が限られていたからこそ、現場で吸収できるものはすべて吸収し、パティシエとしての技術を独自に高めていきました。

最終的に、「本場で学びたい」という強い想いが募り、資金を貯めてフランスへ行き、現地の菓子文化を学びながら修行を重ねました。フランスでの経験はとても良かったです。単に技術を学ぶだけでなく、「素材の香りを生かす」という哲学を体感する貴重な機会となりました。この経験が、現在の「フランス菓子 aisé(エズ)」のコンセプトの礎となっています。

自分らしいお菓子を届けたい—独立への決意

ーー独立のきっかけは何でしたか?

もともとは自宅の工房でオーダーケーキを受注していました。少しずつお客様が増えていく中で、「もっと多くの人に届けたい」「より自分らしいお菓子を作りたい」という気持ちが強くなりました。そして、一念発起して店舗を構えました。

独立にあたっては、資金の確保や物件探しにも苦労しました。理想とする空間を作るために、何件も物件を見て回り、ようやく納得のいく場所を見つけることができました。特に店舗デザインにはこだわり、シンプルながらも温かみのある空間を作るために、内装やディスプレイも細部まで考え抜きました。

ーー独立する際、周囲の反応は?

自宅工房での活動を知っていた方々からは「やっぱりお店を出すんだね」と言われましたね。最初は不安もありましたが、周囲の応援が大きな支えになりました。特に、家族や友人が「絶対成功するよ!」と背中を押してくれたことが大きかったです。

ーーお店をオープンして、最も苦労したことは?

一番は「経営と現場のバランス」です。開業当初は人件費を抑えるために一人で全てをこなすつもりでしたが、業務が膨大になり、経営の視点からも効率的な運営のためにスタッフを雇う決断をしました。最初は売上の不安もありましたが、事業を成長させるには人を増やし、効率よく運営することが不可欠だと学びました。

また、お客様のニーズに合わせて商品を改良し続けることも重要で、単に作るだけでなく、売れる仕組みを考える必要がありました。SNSを活用したマーケティングや、季節限定のメニュー開発、ホールケーキの予約受付など、販売戦略にも注力しました。

ーー印象に残っているお客様の言葉はありますか?

「ここのケーキを楽しみに来ています」というお声をいただいたときは本当に嬉しかったです。特に、「お店ができて嬉しい」と言ってくださる地元の方が多く、その言葉に支えられています。オーダーケーキを通じて、お客様の特別な日に関われることも喜びのひとつです。

「フランス菓子 aisé(エズ)」に来てくれるお客様は、単にケーキを買いに来るだけではなく、特別な時間を過ごすために訪れています。ケーキは嗜好品であり、毎日の必需品ではありません。それでも、「ここに来よう」と思い、お店を目指して時間を作り、足を運び、商品を選んでくださる。この“お客様の時間を預かる”ということが、何よりの喜びです。

開店前から並んでくださったり、特定の商品が売り切れてしまうと「次はいつ入りますか?」とお問い合わせいただいたりすることもあります。お客様がわざわざ時間を割いて、このお店に来てくださる。その時間に見合うだけの価値を提供できるよう、常にクオリティを追求し続けたいと考えています。

お菓子を通じて、心に残る時間を

ーー5年後、10年後のビジョンを教えてください。

今後も、ただのケーキ屋ではなく「ここに行けば、特別な時間を過ごせる」と思ってもらえる場所を作りたいと考えています。お客様の中には、忙しい日々の中で「ほっと一息つける場所」を求めている方も多いはずです。

私自身も、ふと「あのお店に行ってゆっくりしたいな」「あそこで過ごしたいな」と思うような、そんなお店が理想です。特に、私と同世代の方々が年齢を重ねるにつれて、仕事や育児を一段落し、自分の時間を持てるようになったときに、気軽に訪れられる居場所を提供できたらと考えています。

ーーどんな業態を考えていますか?

単なる「ケーキを買う場所」ではなく、「ケーキを楽しむ空間」を提供できるような形を模索しています。たとえば、落ち着いたカフェスペースを設けて、フランス菓子をゆっくり楽しめるようにしたいですね。アフタヌーンティーのように、焼き菓子やデザートを組み合わせたセットメニューを展開するのも面白いかもしれません。

また、お客様同士の交流が生まれるようなイベントも企画したいと考えています。たとえば、ケーキの試食会や、フランス菓子にまつわるワークショップなどを開催し、お菓子を通じた新しいコミュニケーションの場を提供することも視野に入れています。

ーー最後に、読者にメッセージをお願いします。

ぜひ一度エズのお菓子を味わってみてください。皆さまのお越しを心よりお待ちしております。

INFORMATION
フランス菓子 aise (エズ)
https://www.instagram.com/aise.1123/

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