ヒトツナギ
配管工事も教育も“人づくり”から|さくら株式会社

今回は、配管工事を中心に、製造・教育分野にも事業を広げる「さくら株式会社」代表取締役・高橋和義さんにお話を伺いました。創業の原点から、急成長の背景、地域への想いまで、じっくり語っていただきました。ぜひ最後までご覧ください。

【プロフィール】
さくら株式会社 代表取締役 高橋 和義

神奈川県茅ヶ崎市出身。育ちは秋田・仙台。20代で配管工として現場に立ち、若くして独立。仙台市を拠点に、全国規模で配管・機械設置などの工事を請け負う「さくら株式会社」を経営。若手・女性職人の育成にも注力し、地域イベントの運営や教育事業にも展開するなど、多方面で活躍中。

信じたのは「自分の直感」

ーー現在の事業について教えてください。

さくら株式会社では、プラント・半導体・食品工場を中心とした配管工事をメインに、機械器具の設置や防熱工事なども行っています。北海道から沖縄まで全国が現場で、自社工場(仙台)で加工したものを運んで施工しています。大手との取引もあり、1案件で億単位になることもあります。

ーー会社を設立したきっかけは?

20代前半に配管工として現場に立っていた時、「これ、独立すれば自分でもできるんじゃないか」と直感的に感じたのが始まりでした。給与や待遇面も決して良いとは言えない環境でしたが、「だったら自分で働く場をつくろう」と決めたんです。最初は一人親方でスタートし、「数人の仲間と食っていければいい」と思っていました。

ーーそこから今の規模にどう成長したのでしょうか?

とにかくがむしゃらに働きました。創業当初は、夏場に会社に寝泊まりしながら現場を回る日々。創業メンバーたちは、お盆に1日休んだら年末まで無休という状態も経験しています。

今では多様な働き方に対応し、女性職人の採用にも注力。子連れ出勤が可能な託児制度や、産休・育休、復帰後の時短勤務制度も整えています。「長く安心して働ける職場」を目指し、年間休日も123日を確保しています。

ーー創業初期に苦労したことや、特に印象に残る経験はありますか?

お金がなかったですね。下請けのさらにその下からスタートし、月末の支払いにいつも冷や汗をかいていました。それでも「目の前の一人を大切にする」という考えはずっと変わりませんでした。仕事で失敗した社員にも再起のチャンスを与える。そうした積み重ねが、今の社風や信頼につながっています。

「人材育成」こそ、最大の投資

ーー御社の強みについて教えてください。

強みは「人の成長に投資していること」です。平均年齢は30代半ばで、新卒採用にも力を入れています。特に今年からは現場のエースだった常務が新人教育に特化した役割を担い、1〜2年目の育成に時間と労力をかけています。自社独自の教育カリキュラムも作成していて、会社の未来を担う人材育成を重要視しています。

ーー従業員との関係性は?

全国から若者が集まり、地方出身者も多く在籍しています。最近では女性の応募も増え、職人として現場に立つ方も出てきました。男性社会のイメージが強い業界ですが、託児室を設けて子連れ出勤できる会社づくりなど、女性が活躍できる現場づくりに努めています。時代に合わせて「ここで働き続けたい」と思ってもらえる環境づくりをしています。

4つの法人を一本化し、未来を拓く

ーー今後の展望について教えてください。

現在、グループとして運営している4つの法人を、1つの会社「さくら株式会社」に統合する構想を進めています。これまで独立して動いていた配管、製造、教育の各事業を、会社内の事業部ごとに整理し、それぞれの強みを最大限に発揮できる体制を整えていく予定です。これにより、経営判断のスピードや部門間の連携が高まり、全体の成長をさらに加速させたいです。

また、業界全体の人手不足に対し、さくら株式会社として何かできないかなと考えています。特に注目しているのは、工場の「設備課」へのアプローチです。製造部門や営業部門に比べて人手が不足しやすく、最初に人員が削減される対象にもなりがちな領域です。そこを当社が補うことで、保守点検や軽微な改修といった日常的な業務を代行し、今まで当社を育ててくれたお客様・会社へ価値提供を実現できたらなと思います。

人を育てる、新しい教育のかたち

ーー教育事業はどのようなきっかけで始めたのですか?

教育事業については、2024年7月にM&Aで取得した学習塾を基盤にスタートしました。現在では300人以上の生徒が通うまでに成長し、単なる受験対策ではなく、「非認知能力」の育成を中心とした教育を展開しています。

ーー非認知能力とはどのようなものですか?

自己肯定感、リーダーシップ、他者と協調する力、与える喜びを知る感性など、学力以外の“生きる力”ですね。最近は「管理職=罰ゲーム」といった言葉もありますが、子どものうちから人をまとめる楽しさや、人に与えることで得られる感動を知ってもらいたいんです。

ーー教育と会社の事業はどのように関わっていますか?

こうした教育のテーマは、社内マインドの醸成や将来のリーダー育成にも直結していたり、単なる別事業ではなく、既存事業と深くリンクしています。いつかこの塾の卒業生から「いいリーダー」や「経営者」が出てきたら、本当に嬉しいですね。

イベントを通じた展開も積極的に行っています。「宮城スマイルプロジェクト」では、宮城県内各地でイベントをやっていて、例えば元プロ野球選手とのストラックアウトや配管施工体験、職業体験、マルシェとかをやったり。特に盛り上がったイベントでは3500人以上が来場し、子どもたちにものづくりの楽しさを伝えるだけでなく、ママ世代の交流や地域活性化にもつながりました。

今後も教育と社会貢献、そして企業としての成長を結びつけながら、「人を育てる企業」としての在り方を追求していきたいと考えています。

未来へのビジョンと“職人”への誇り

ーー今後の目標や夢を教えてください。

5年後、10年後の目標として、50歳までに年商50億円を達成できる会社に成長させたいと考えています。ただ、目指すのは単なる規模の拡大ではありません。設計や頭脳労働中心のビジネスモデルではなく、あくまで“手を動かしてものを作る”職人の仕事にこだわり続けたいと思っています。

世界的に見ても、日本の現場力、特に技術・技能の高さはずば抜けています。海外に行っても、日本の配管や施工のクオリティは群を抜いていて、「日本ってすごいな」と改めて感じさせられます。その中でも、東北や北海道の職人さんたちは特に真面目でよく働き、誇りを持って仕事に向き合う方が多いと実感しています。

だからこそ、配管工という職種を“かっこいい仕事”として広めたいという想いがあります。インフラを支える重要な職種であり、災害復旧の最前線でも活躍できる社会的意義の高い仕事です。将来的には、子どもたちの「将来なりたい職業ランキング」のベスト10に入ってくるような、そんな仕事にしたい。だからこそ、イオンモールなどで配管体験のイベントを開催し、「こんな仕事があるんだ」と親子で知ってもらう機会をつくっているんです。

そして最終的には、「さくらで働けてよかった」と社員やその家族に心から思ってもらえるような会社をつくっていきたい。そんな未来を目指して、これからも泥臭く、まっすぐに、手を動かし続ける経営をしていきたいと思っています。

INFORMATION
さくら株式会社
https://www.sakura2012.co.jp/

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