今回は、仙台を拠点にLINEマーケティングツール「LIBOT(リボット)」を展開する株式会社AIBOTの代表取締役副社長・舘向優樹さんにお話を伺いました。学生時代から起業に至るまでのリアルな経験や、会社の哲学、そして国内外に広がる未来構想まで、たっぷりと語っていただきました。ぜひ最後までご覧ください。

【プロフィール】
株式会社AIBOT 代表取締役副社長 舘向 優樹
2000年生まれ。宮城県仙台市出身。仙台高専を卒業後、LINE公式アカウントを利用した新規集客に特化した独自のSaaS「LIBOT(リボット)」を開発・販売する株式会社AIBOTの創業メンバーとして起業。現在は副社長として経営と営業を中心に活躍。多様な事業展開と柔軟な働き方で注目を集める若手経営者。
INDEX
創業は19歳、LINEツールの開発に賭けた青春
ーーまずは自己紹介と、現在の事業について教えてください。
2000年生まれで、現在25歳です。起業したのは19歳のときで、今が5期目になります。現在はLINE公式アカウントと連携する独自のマーケティングツール「LIBOT(リボット)」の開発・販売を主軸に、ITコンサルティングやSES、さらにはAIを活用したソリューションの開発にも取り組んでいます。
もともと仙台高専に在学中、YouTubeやブログなどを活用して地域のお店を取材し、Web広告収入を得ていた経験が原点です。その後、アパレルの輸入業にも挑戦しましたが、コロナ禍で物流が完全に止まり撤退。そんな中、私のSNS関連の発信を見た方から声をかけていただき、企業のWebサイト運用を個人で担当するようになりました。
その仕事を通じて現在の出資者と出会い、「LINEボットを作ってみないか」と持ちかけられたのが転機でした。卒業研究ではそのボット機能を応用し、「友だち紹介機能」をテーマに開発。これが現在のLIBOTの核になり、4人の仲間とともにAIBOTを創業しました。
この「友だち紹介機能」は後に、業界内でもユニークな機能として注目を集め、起業2期目には特許を申請。3年越しに審査が通り、昨年ようやく正式に特許として登録されました。「自分たちが作った仕組みが、社会に認められた」と実感できたこの経験は、会社にとっても、個人にとっても大きな自信になった出来事です。
特許取得の「友だち紹介機能」で差別化を実現

ーーLIBOTの特徴について詳しく教えてください。
LIBOTの最大の強みは、ユーザーが誰を紹介したかを可視化できる「友だち紹介機能」です。飲食店などがLINE公式アカウントを通じて「紹介してくれたら特典をプレゼント」といったキャンペーンを手軽に展開できるようになります。
一般的なLINEツールは「顧客管理」が中心ですが、私たちは「まず顧客を集めること」が中小・零細企業にとって先決だと考えています。LIBOTはその課題をリファラル(紹介)という仕組みで解決します。広告費をかけず、信頼性の高い口コミで集客ができる。これが多くの事業者に選ばれている理由です。
「鬼自由」な組織づくりと強いチーム力

ーー社内文化や働き方についても独自性があると伺いました。
当社の働き方を一言で表すなら「鬼自由」。出勤・退勤時間の制限はなく、スーパーフレックス制を導入しています。昼に出社してもOK、海外からリモートで働くメンバーもいます。結果さえ出していれば、働き方は問いません。私も先日平日にバンコクに行ってきました(笑)
その代わり、成果に対する報酬は明確です。営業利益の余剰は年に一度、社員に等分してボーナスとして還元。誰もが自分の行動と会社の数字を直結して考えるようになります。社内の財務状況はすべてオープンにしており、透明性の高さもやりがいにつながっています。
また、食事を通じた交流も大切にしていて、「晩ごはん制度」という福利厚生も導入。社内の人と外食した際の費用は会社が負担します。自然と会話やアイデアが生まれる場ができ、チーム全体の結束も強くなっています。
苦労も詐欺もすべてが糧
ーー創業当初、特に大変だったことは?
開発初期は、自社開発でキャッシュが入るまで時間がかかるのが最大の課題でした。エンジニア2人で開発を進め、文字通り「寝ずにコードを書く」日々。オフショア開発に頼ったこともありましたが、納品されたのは全く使えないシステム。半年分のコストと時間を失いました。
それだけでなく、個人的にも3度ほど詐欺に遭い、計100万円ほど失いました。こうした経験から、「自分の手の届く範囲でビジネスを構築する」ことの重要性を学びました。今でも、新規事業を完全に外部に任せることは避け、自社でコントロール可能な体制にこだわっています。
ーー逆に嬉しかったことはありますか?
最近ありがたいことに雑誌やテレビなどメディアにも多数取り上げていただき、2025年度には「ベストベンチャー100」にも選出されました。2024年にノミネートされて、2025年に正式に受賞という形でしたが、これはメンバー全員の努力が評価されたようで、本当に嬉しかったですね。
「ありがとう」と「走馬灯で見そうな景色」が人生の指針

ーー仕事や人生において、大切にしている価値観は何ですか?
「ありがとう」と「走馬灯で見そうな景色」、この2つです。人から感謝されることが、仕事の中で一番うれしいし、自分の存在意義を感じる瞬間でもあります。そして、人生でどれだけ美しい景色に出会えるかも大事にしていることのひとつです。
お金はそのための手段であり、自分の人生をより良くするツールでしかありません。だからこそ、「人の役に立つことでお金を稼ぐ」ことに強くこだわっています。
地元仙台で挑戦する意味
ーー仙台に拠点を構える理由について教えてください。
学生時代から東京や福岡など様々な都市に住みましたが、結局仙台に戻ってきました。理由は単純で、地元が好きだから。家族もいるし、お世話になった人も多い。そんな人たちと一緒に仕事ができるのは何よりの喜びです。
また、仙台は首都圏にもアクセスしやすく、働き方を柔軟にしている今の当社にとっては非常にバランスの取れた拠点だと思っています。
海外展開とAIの未来へ
ーー今後の展望について教えてください。
現在注力しているのは、LIBOTの海外展開です。特にタイではLINEが広く使われており、実際に現地に足を運んで可能性を感じました。同じ仕組みをそのまま展開できる環境が整いつつあります。
もうひとつはAI領域。自社開発で「AIリプライ」や「AI面接官」など複数のプロダクトが進行中です。前者はLINE上の自動応答により業務負荷を軽減し、後者は面接の一部をAIが代替する仕組み。まだ試作段階ですが、今後の業務効率化に貢献すると信じています。
年商100億、その先の選択肢を広げるために
ーー5年後、10年後のビジョンを教えてください。
正直、明確な「ゴール」は決めていません。創業当初も今の姿を想像できていなかったように、未来も柔軟に変化するものだと思っています。ただ、目先の目標として「年商100億円企業になる」ことは掲げています。
その先にあるのは、上場かバイアウトか、もしくは永続企業としての成長か。選択肢を広げるためにも、まずは会社の基盤をより強く、より大きくしていきたいと考えています。

INFORMATION
株式会社AIBOT
https://ai-bot.co.jp/