ヒトツナギ
「支える力」で地元の未来をつくる建設業|株式会社松川土木

今回は、宮城県黒川郡大衡村の総合建設会社「株式会社松川土木」の代表取締役・松川利守さんにお話を伺いました。創業者である祖父から受け継がれた思い、地元への深い愛情、社員との関係性、そして次世代へのまなざしまで。波乱万丈の経営人生を通して語られる、“地に足のついた経営哲学”に触れてください。

プロフィール
株式会社松川土木 代表取締役 松川 利守
宮城県黒川郡大衡村出身。祖父の代から続く建設会社「株式会社松川土木」の3代目社長。地元に密着した建設業を継承しつつ、剣道の指導や村内の各種団体活動を通じて、地域づくりにも深く関わる。社員と地域に対する誠実な姿勢が、多くの信頼を集めている。

家業としての建設業、祖父から続く地元への責任

ーーまずは、自己紹介と御社の事業について教えてください。

私は宮城県黒川郡大衡村で生まれ育ちました。創業者である祖父が立ち上げた当初は、数人の職人で小さく始めた会社でした。そこから父の代では、官公庁発注の元請工事を請け負える規模にまで成長しました。

大学卒業後は仙台の総合建設会社で5年間勤め、現場と経営の両面を学びました。地元に戻った後は家業に入り、現在は総合建設業として、地域の公共工事を中心に多様な土木事業を展開しています。

経営者の現実は「孤独」との向き合い

ーー実際に代表を継がれて、何が一番大変でしたか?

「孤独ですね」。これは実感として強いです。社長というのは、感謝よりも苦情が届きやすい立場です。経営上の判断も、最終的な責任はすべて自分に返ってきます。

特に景気が低迷していた時期は、資金繰りや受注の確保で本当に苦労しました。社員の生活を守らねばという思いから、夜も眠れない時期がありました。それでも、家族や社員、地域の支えがあり、一歩一歩立て直してきました。

ーー3代目として、プレッシャーを感じることはありますか?

「初代が基盤を築き、2代目が発展させ、3代目が潰す」——そんな言葉、冗談のようで実際に言われることもあります。笑い話にできないプレッシャーですね。

祖父は地域のインフラ整備に尽力し、父は元請として事業を拡大させました。私が継いだ時は、まさにその重みを感じました。特別な手法を使ったというより、以前勤めていた会社で学んだ実務や視点を活かしながら、目の前の課題を地道に解決してきた感じです。社員や地域の方々に支えられ、今もなんとか維持できているというのが正直なところです。

支える重みと、喜びのかたち

ーーこれまでの経営の中で、嬉しかった瞬間を教えてください。

一番嬉しかったのは、「赤字だった決算が黒字に転じたとき」です。会社を継いだ当初は、負債や赤字を抱えた状態でのスタートでした。過去の蓄積を受け継ぎながらも、経営を立て直すというのは簡単なことではありませんでした。

ですが、父の代から長年働いてきたベテランの職人たちや、地元の取引先との関係性に助けられながら、少しずつ改革を進めていきました。帳簿を見直し、評価制度や給与体系も徐々に整えていきました。

私がよく話すのは、「松川土木という“財布”をどう維持していくか」です。会社という組織が健全に続いてこそ、みんなの生活が守られる。そのためには、私だけではなく、全員で意識を共有しなければならないと感じています。

「1年を何事もなく、無事に乗り切れた」と決算を迎えられる瞬間は、やはり何ものにも代えがたい。大きな事故もなく、会社が継続していけること——それが今の私にとって一番の喜びです。

“職人魂”が支える、技術と信頼

ーー会社としての強みはどんな点でしょうか?

当社の強みは「幅広く対応できる技術力」と「構造物工事への確かな対応力」です。

コンクリート構造物や鉄筋の組み立てなど、専門性の高い工事にも対応できる技術者が社内に育っています。特に橋のアバット(橋の両端にある基礎構造)など、精密さと確実な施工が求められる工事も、外注に頼らずに自社で完遂できます。

他社と比べて特別なことをしているわけではありませんが、「堅実で丁寧な施工」が信頼に繋がっていると思います。社員たちも決して器用に振る舞うタイプではないけれど、どんな仕事でも責任を持ってやりきる——そんな“実直さ”が当社らしさかもしれません。

地域に根ざし、地元とともに歩む

ーー地域活動にも長年関わっていらっしゃいますね。

剣道の指導はもう30年以上になります。スポーツ少年団の本部長やPTA会長、村のスポーツ協会の会長なども経験し、いわゆる“地域の役”は数多く担ってきました。

すべてボランティアですが、「地元で育った自分がやるべき」という思いが根底にあります。子どもたちと接しながら、未来を担う人材づくりにも微力ながら関わっていけたらと考えています。

役場や地域団体との関わりも多く、結果的にそれが仕事や信頼関係にもつながってきました。

若い世代とともに未来を考える

ーー今後の会社の展望について教えてください。

私の目標は、「会社を次の10年につなげること」。本業である建設業はもちろん、時代の変化に適応する新しい分野にもチャレンジしていきたいと考えています。

すでに社内の幹部・社員と共に、新たな事業の方向性について話し合いを進めており、地域ニーズに合った取り組みを模索中です。大きく路線を変えるのではなく、今あるリソースを活かした「第二の柱」をつくるようなイメージです。

その中で、特に大切にしたいのが“若い世代の視点”。今の20代30代が、どんな価値観で生き、どんな働き方を望んでいるのか——それを知ることが、これからの会社づくりにおいて非常に重要だと思っています。

「周囲が潤えば、自分も潤う」

ーー人生や仕事において、大切にされている価値観を教えてください。

「周囲が潤えば、自分も潤う」という考え方です。会社だけ、自分だけ良くても、地域や周りの人たちが元気でなければ意味がない。剣道を教えてきた中で、「人を育てる」「支える」ということの大切さを実感してきました。

だからこそ、会社も地域も、みんなが成長できるような関係を築いていきたい。少し理想論かもしれませんが、それを実現するのが私の使命だと思っています。

INFORMATION
株式会社松川土木
http://matsukawa-doboku.co.jp/

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