今回は、宮城県仙台市で介護・福祉事業を幅広く展開する「コスモスケア株式会社」の代表取締役・佐藤活嗣さんにお話を伺いました。IT業界から一転、介護業界へ飛び込み、地域とともに歩んできた25年の軌跡。そして、地域課題に真正面から向き合いながら描く未来像について、たっぷりと語っていただきました。ぜひ最後までご覧ください。

【プロフィール】
コスモスケア株式会社 代表取締役 佐藤 活嗣
宮城県気仙沼市生まれ。関東・仙台での生活を経て、家業である介護事業を引き継ぎ、株式会社コスモスケアの代表取締役に就任。IT業界出身の視点を活かし、地域に根ざした包括的な福祉サービスを展開している。
INDEX
介護の道に導いた“ありがとう”の一言
ーー本日はよろしくお願いいたします。まず、自己紹介と会社の事業内容について教えていただけますか?
はい、よろしくお願いします。コスモスケア株式会社の佐藤活嗣と申します。出身は宮城県気仙沼ですが、家庭の事情で転勤が多く、仙台や埼玉、東京などあちこちで過ごしました。大学も関東で、最初の就職先は外資系のIT企業。システムエンジニアとして6年間働いていました。
ただ、ITの現場は当時とても厳しくて…。クレーム対応も多く、「ありがとう」と言われるよりも怒られることのほうが多かったんです。そんな中、母が始めた介護事業を手伝ったとき、ほんの少しお手伝いをしただけでご利用者さんから「ありがとう」と言っていただけた。その一言に心を打たれました。「こんなに人に喜んでもらえる仕事があるんだ」と思って、すぐにこの仕事に魅了されたんです。
自宅の一室から、31事業所の介護ネットワークへ

ーー今、コスモスケアさんで展開している事業について教えてください。
当社は介護保険をベースにした事業を幅広く展開しています。訪問介護、デイサービス、ショートステイ、グループホーム、小規模多機能居宅介護など、制度上できることはほとんどやっています。それに加えて、障害福祉事業も行っていて、重度訪問介護や就労支援、相談支援なども含め、地域のニーズに応じて少しずつ広げてきました。
実はスタートは、実家の僕の勉強部屋だったんですよ(笑)。ある日帰省したら、部屋がケアマネ事務所になっていて、母が「ケアプランセンターを始めた」と。そこから25年、今では12拠点31事業所を運営しています。社員も400名を超えました。
“家族経営”から“仲間と創る組織”へ
ーー代表取締役に就任されるまでの流れを教えていただけますか?
母の事業に加わった当初は事務職としてスタートしました。でも、いつの間にか事業計画を任されて、そのまま現場にも出て、ケアマネや介護福祉士の資格も取得して…。気づけば経営にも自然と巻き込まれていましたね。家に帰っても資金繰りや職員の話、24時間ずっと仕事の話がある生活。振り返ると、当時からすでに経営者の感覚はあったのかもしれません。
2018年に代表を引き継ぎました。そのタイミングで、家族中心だった経営体制を刷新し、長年一緒にやってきたメンバーを取締役に迎え、10名の経営チームを組みました。それぞれの部門責任者がしっかり役割を担いながら、全体で連携して進める体制が整ってきています。
震災が教えてくれた、“当たり前”の尊さ

ーーこれまでで一番大変だった出来事はなんでしょうか?
やっぱり東日本大震災ですね。当時、資金の問題で中古物件を使っていた施設が多く、建物の耐久性も高くなかった。ガラスが割れ、トイレが吹き飛び、水も電気も止まった状態で、高齢者の方とロウソクの明かりだけで一晩過ごしました。十分なお世話もできず「ごめんね」と言いながら寄り添っていた記憶があります。
でも、その経験から“当たり前”の大切さを改めて感じました。電気や水道、あたたかい布団。私たちが当たり前と思っていることが、当たり前ではない。高齢者や障害を抱える方は、日常からその“当たり前”を手に入れにくい人たち。その人たちに、当たり前の幸せを届ける仕事なんだと気づかされた瞬間でした。
地域とともに価値ある未来を創る
ーー他の福祉事業者と比べて、御社の強みや特徴はどこにありますか?
今年、新たに会社の存在意義(パーパス)を定めたんです。「地域と生きる、地域と私たちが共に価値ある未来を創造する」。母の代から続く“地域に必要なサービスをつくる”という姿勢は今も変わりません。
最近は、介護保険ではカバーしきれない相談も増えていて、たとえばおひとり暮らしの方の身元保証やお墓の手配、相続の支援など、これまでは「できません」と断ってきた領域にも踏み込んでいこうと準備を進めています。
また、障害福祉でも、高齢者と障害者が同じ施設を利用できるように届け出を出すなど、既存の枠を超えて「地域の困りごとにまず対応する」という姿勢を徹底しています。
社員一人ひとりの人生にも寄り添いたい

ーー従業員の働き方への取り組みについて教えてください。
当社では、夜勤のある施設を中心に「週休3日制度」を導入していて、年間休日154日と108日の2つから選べる仕組みにしています。給与や労働時間は同じで、1日あたりの勤務時間が変わるだけ。実際に、制度を選べる事業所では、90%以上の社員が週休3日を選んでいます。
この制度、もともとは「夜勤だと旅行も行けない」といった声を聞いて導入したんですが、プライベートの時間が充実すると、仕事へのモチベーションも上がるんですよね。今では、日中帯勤務のスタッフからも「私たちも週休3日制度を導入してほしい」というリクエストが増えてきていて、これから少しずつ全社に広げていこうと考えています。
さらに、余暇を活かして副業にチャレンジする社員も出てきました。たとえば、デイサービス勤務のスタッフが、訪問介護の現場を週1回体験してみたり。こうした“社内副業”によってスキルが広がり、視野も広がる。それがまた会社にとってもプラスになります。
ーー外国人スタッフの方々についても教えてください。
今、当社には18名の外国人スタッフが在籍しています。中には、介護福祉士や看護師の資格取得を目指していたり、日本で永住したいという目標を持っている方もいます。ミャンマーなど政情が不安定な国から来ている方もいて、家族を日本に呼び寄せたいという夢を持っている。
そういう方々の人生を応援できるように、制度面でもサポートを続けています。仙台という街に根づき、地域を支える担い手になってもらえたら、こんなにうれしいことはないですから。
最終的には、社員にとっても、地域にとっても、人が集まって育つ「プラットフォーム」のような会社にしていきたい。それが今の私の目標です。
後悔しない選択を積み重ね、未来を描く
ーー佐藤さんご自身が大切にしている価値観を教えてください。
私の中にある一番の判断基準は、「後悔するか、しないか」です。やらずに後悔するより、やってみて後悔するほうがいい。家族や仲間の顔を思い浮かべながら、「この選択は胸を張れるか?」と考えて判断するようにしています。
誰もが長く働き、成長できる「地域のプラットフォーム」に
ーー今後、5年後・10年後の会社の姿についてお聞かせください。
週休3日制度を全社に導入して、社員がもっと自由に働ける会社にしたい。育児や介護などのライフステージの変化にも柔軟に対応できる体制をつくっていきたいです。
新卒から入り、結婚・出産・復職を経ても、また活躍してくれている社員もいます。そうした「一人ひとりの人生」に寄り添える会社でありたい。働く人が人生を安心して預けられる場所、そして地域の人たちから「困ったときはここに」と思ってもらえる存在を目指して、これからも進んでいきます。

INFORMATION
コスモスケア株式会社
https://www.cosmoscare.jp/