不動産業を軸に、飲食業、アミューズメント業、食品製造小売・卸売業、システムブレーカーの販売代理点の5つの事業を展開する株式会社パラマウント。飲食業では、古民家を活用した「蕎麦処 初代伝五郎」「オ フルニル デュ ボワ」「山形蕎麦 鶴-KAKU-」などの店舗を展開しており、地域の魅力を活かした空間づくりが多くの人々から注目を集めています。
今回は、そんな株式会社パラマウントの代表・粕川利史さんにお話を伺いました。その多角的な事業の背景や、東日本大震災、コロナ禍を乗り越えてきた歩み、そして今後のビジョンについて語っていただきました。ぜひ最後までご覧ください。

プロフィール
株式会社パラマウント 代表取締役 粕川 利史
宮城県仙台市出身。千葉の大学を卒業後、民間企業を2社経験し、26歳で地元仙台に戻る。29歳で家業の株式会社パラマウントを事業承継。現在は、不動産業を中心に、飲食業、アミューズメント業、食品製造小売・卸売業、代理店業など、多角的な事業展開を行っている。
多角経営と家業の承継
ーーまず、会社の概要と代表になったきっかけを教えてください。
株式会社パラマウントは、不動産を中核に、カラオケ店、飲食、食品製造小売・卸売業、システムブレーカーの販売代理と、5つの事業を展開しています。私は創業者ではなく、2代目として会社を承継しました。創業は私の両親で、今から40年前。大学卒業後、2社ほど民間企業での勤務を経て、26歳で仙台に戻り、29歳で事業を引き継ぎました。
小さい頃から継ぐのだろうと漠然と思ってはいましたが、特別に強く意識していたわけではありません。ただ、後継者としての自覚はあり、いずれ自分が経営する立場になるという心構えは持っていました。
承継前は不動産業の勉強をしていたわけではなく、入社後はギャップも大きかったです。ただ、その違いを補いながら、少しずつ業務を覚え、会社の拡大に向けた体制づくりを進めていきました。
震災直後の出店で見えた、地域への役割

ーー事業承継後、印象的だった出来事はありますか?
ちょうど東日本大震災の直前に、天然酵母のパン屋「オ フルニル デュ ボワ」をオープンしたのですが、10日後に震災が発生。一度雇用契約を解除せざるを得ず、採用したスタッフ全員が離れることに。そこからの再スタートは非常に苦労しました。
一方で、震災1ヶ月後に予定していたそば店「蕎麦処 初代伝五郎」のオープンも、混乱の中で1ヶ月遅れて開業しました。食料不足の中でオープンしたそば店には、地域の方がたくさん来店してくれました。「何か少しでも役に立てたのでは」という想いが残っています。
そば屋の開業直後、スーパーには商品がなく、飲食店の存在が地域のインフラの一部として強く求められていた時期でした。その中で営業できたことは、私たちにとっても忘れられない経験となりました。
社員と共に育てる経営ビジョン

ーー会社としての理念や方針について教えてください。
私たちは「全員主役の経営」という考えを掲げています。仕事とプライベートの両方を大事にしながら、自分の人生を豊かにしていけるような働き方を目指しています。
毎年5月に「経営方針発表会」を開催し、全店舗・全社員と目標を共有しています。数年ごとに、会社の行動指針をまとめた冊子「パラマウントスタンダード」も作成しています。今では若手社員が中心となり、社員アンケートやディスカッションをしながら自らの言葉で会社のあり方を考える仕組みを作りました。
初代の「パラマウントスタンダード」作成時には、メンバー8人でプロジェクトを立ち上げましたが、内容が普段の業務とは異なるため、「自分がやりたかった仕事と違う」との理由で3~4人が1ヶ月以内に退職するという苦い経験もありました。当時は「なぜこれをやるのか」という根本の部分を丁寧に伝える時間を取れておらず、自分自身の伝え方にも課題があったと感じています。
その反省をもとに、2代目、3代目の「パラマウントスタンダード」では、メンバーに思いを共有する時間を何度も設け、「なぜ大切か」「何のために作るのか」という背景を伝えるよう意識しました。結果として、3代目の「パラマウントスタンダード」は参加メンバー全員が自立的に、楽しんで取り組んでくれたプロジェクトとなり、内容も実際の業務に落とし込めるものへと進化しています。実際に今年の「経営方針発表会」でこの内容を共有した際には、社員からの前向きなコメントが多く寄せられ、会場では活発なディスカッションが生まれました。自ら関わって作り上げたからこそ、社員一人ひとりが当事者意識を持ち、内容の理解と納得感が深まったと感じています。
このプロジェクトには、入社1年目の社員も関わっています。社員一人ひとりの声を反映させた経営方針は、全員の納得感と実行力を引き出していると感じています。
「ありがとう」の言葉が原動力に
ーーお客様からの声で、印象的なエピソードはありますか?
カラオケ店のお客様から、「つらいことがあったけれど、スタッフの笑顔と接客に救われた」と感謝の手紙をいただいたことがありました。その言葉に、私も、スタッフも非常に励まされました。
かつては、アンケートの声に対してスタッフが全て返信し、店内に掲示するという取り組みも行っていました。良い声も悪い声も正直に受け止め、改善や感謝を伝えるコミュニケーションを重視する姿勢は、今も社内に根付いています。
こうした文化は、現場のスタッフの発案によって生まれたもので、お客様とスタッフの双方向のやり取りがさらなるサービス向上へとつながっていました。
若手も1年目から経営に関われる会社

ーー社内の働き方や特徴について教えてください。
入社1年目でも事業計画づくりに参加できるのが当社の特徴です。年齢や年次に関係なく、意見を出し合い、プロジェクトに関われる仕組みを整えています。
現場での接客やものづくりが好きで入社した人たちが、「社長の仕事」とされるような企画業務にも挑戦できるよう、丁寧に目的を伝えることを心がけています。例えば、そば打ちやパンづくりといった日々の業務から離れた視点で会社のあり方を考えることは、新鮮でありながらも、最初は戸惑いや抵抗を感じる社員も少なくありません。それでも、なぜこの取り組みが必要なのかを伝え続けることで、徐々に理解と共感が広がっていきました。社員一人ひとりが経営に関われる環境を作ることが、会社の強みにもなっています。
また、「全員主役の経営」という方針のもと、仕事以外の時間も大切にしており、個々人のライフスタイルや価値観を尊重する文化も根付いています。
地域とともに成長する事業展開へ

ーー今後の展望を教えてください。
創業からの主軸である不動産事業では、これまで法人向け(BtoB)が中心でしたが、2025年から個人向け居住用賃貸ブランド「レジデア」を立ち上げ、BtoCにも本格参入しました。この事業では、これまで法人向けが中心だった不動産事業から一歩踏み出し、個人の暮らしに寄り添う提案を行うことで、より地域に根ざした存在となることを目指しています。
また、そば店やパン屋についても、今後5年間で店舗数を拡大していく計画です。古民家を活用した店づくりを通じて、空き家問題が深刻化する中で、地域資源を活かした飲食店を増やすことで、地域活性化にも貢献したいと考えています。
さらに、そば店「蕎麦処 初代伝五郎」は40〜70代の夫婦や女性グループを中心に支持されてきましたが、最近ではそのお客様が友人や家族、孫を連れて再訪するなど、幅広い層に広がっています。今後は、宮城県に増えている台湾からのインバウンド客も視野に入れ、日本の伝統家屋とそば文化を体験してもらえる場として、古民家店舗の魅力をさらに発信していく予定です。
5年後には、飲食店舗数は現在の3店舗から8店舗へ、不動産事業でも居住用物件の取り扱いを拡大し、組織規模も従業員数100〜120名規模へと成長させていく構想です。既存事業の深化と組織体制の強化を通じて、より多くの人々に価値を届けられる企業を目指していきます。

INFORMATION
株式会社パラマウント
https://pmsp.co.jp/