今回は、仙台市内を中心に7店舗の飲食店を展開する「株式会社ワールドハーツ」代表取締役・坂本健洋さんにお話を伺いました。起業のきっかけや経営への想い、そして地元仙台への熱い気持ちについて、たっぷりと語っていただきました。飲食業界の最前線で挑み続けるその姿勢から、多くの気づきや勇気をもらえます。ぜひ最後までご覧ください。

プロフィール
株式会社ワールドハーツ 代表取締役 坂本 健洋
仙台市長町出身。高校まで野球に打ち込み、その後飲食業界に進む。大学在学中に起業し、仙台市内で焼肉店や居酒屋、韓国料理店など多彩な飲食業態を7店舗経営。
起業を決意した大学時代

ーー起業のきっかけについて教えてください。
子どもの頃から「お店を持ちたい」という想いがありました。美容師さんや古着屋のような、独自の空間でお客様と直接関わる仕事に憧れていたんです。大学は経営学部へ進学しましたが、進路に迷っていた時に、国分町のバーでアルバイトを始めたことが大きな転機でした。
お客様と対話を重ねるなかで、「ありがとう」の重みを知り、自分の提供する空間が誰かの楽しさになることに喜びを感じ、気づいたらどんどんのめり込んでました。これが、自分の天職は飲食業だと確信するきっかけでした。
ーー実際に起業に至るまでの道のりを教えてください。
バーでのアルバイトから、社員、店長とキャリアを重ねる中で、店舗運営のノウハウやマネジメントの難しさを実感しました。一方で「もっと自分のスタイルで勝負したい」という思いが強くなっていったのも事実です。
そんな時に東日本大震災が起こりました。地元仙台が混乱し、自分の将来にも迷いが生まれる中で、「やっぱり飲食で勝負したい」という気持ちは揺るぎませんでした。大学を復学しながらも、前職では責任者として働き続け、「店を出すなら今しかない」と起業を決断。人生で初めて本気で“勝負”に出た瞬間でした。
ーー起業に対するご家族の反応はいかがでしたか?
最初はやはり驚かれました。特に母は大反対でしたが、最後には「経理をしっかり任せるなら」という条件で協力してくれることになりました。今では母が経理の要として会社を支えてくれていて、本当に感謝しています。
父は「後悔するくらいだったら失敗してもいいからやってみろ」と背中を押してくれるタイプで、父とじっくり話した夜のことは、今も鮮明に覚えています。あの一言がなければ、起業には踏み切れなかったかもしれません。
想像以上の手応え、そして急成長

ーー創業当初は順調でしたか?
創業から5店舗目くらいまでは、本当に順調でした。想定以上の売上があり、自信にもつながりました。特に仙台駅前に初めて出店したときは、当初から国分町から仙台駅前にお店を出すことを目標にしていたので、自分の中でも大きな達成感がありました。
そこから更に事業を加速させるために初めて金融機関からの本格的な借り入れを行いました。一気に出店スピードが加速し、わずか1年半で4店舗をオープンしました。借入額も膨らみ、かなり攻めた展開だったと思います。今振り返れば、「若さと勢いで出しすぎたな」と感じますし、当時の自分に今の自分がアドバイスできたら、もう少し慎重に行動したかもしれません(笑)
ーーかなり順調ですね。急成長の中で問題はありませんでしたか。
怒涛の出店ラッシュの中で徐々に組織の限界を感じ始めました。ありがたいことにたくさんの方がチームに加わってくれましたが、それをきちんと束ねる体制が整っていなかった。売上自体は仙台駅前の出店当初は非常に好調でしたが、徐々に下降線をたどってしまいました。「このままではまずい」と感じ始めた矢先に、コロナが直撃しました。
10店舗の矢先でコロナ禍

ーーそうだったのですね。コロナ禍中はどのような状況でしたか。
コロナは本当に厳しかったです。その時には10店舗になっていましたが、ほとんどの店舗を休業せざるを得ない状態。売上はゼロに近い状態になりました。ただ、「会社を畳む」という選択肢は最初から考えていませんでした。従業員やその家族の顔が浮かび、「自分がやめるわけにはいかない」と踏ん張りました。
何ができるかを考えた結果、最初に始めたのが“お弁当”と“お惣菜”の販売でした。普段は居酒屋や焼肉店として営業していた店舗が、慣れない惣菜作りにチャレンジすることになりました。当然、簡単にはいきません。調理方法も、販路も、全く未知の世界でした。
それでも、スタッフが一生懸命に考え、手伝ってくれました。その姿を見て、「この仲間たちとなら、何があっても乗り越えられる」と心から思いました。
一店舗一店舗の価値を上げたい
ーーワールドハーツの強みは?
私たちの強みは、“業態の多様性”と“チャレンジ精神”にあると思います。これまで焼肉店、韓国居酒屋、和風居酒屋、ビアガーデン、マルシェ店舗など、さまざまな形態に挑戦してきました。その背景には、常に「今のお客様に何が求められているか」を考え、柔軟に対応してきた姿勢があります。
とはいえ、すべてが順風満帆だったわけではありません。潰れた店舗も、失敗した企画もあります。ただ、そうした経験がなければ、今の自分たちの姿はなかったとも感じています。だから私は「失敗こそが最大の学び」だと捉えています。
今後は、ただ出店数を増やすことよりも、「一店舗一店舗の濃度を高めていく」ことを重視したいと考えています。つまり、1軒のお店が持つ価値や完成度を上げていくこと。そこにしかない世界観、サービス、接客を徹底的に磨き上げることで、より多くのお客様の心に残る体験を提供していきたいです。
仙台の街とともに成長する

ーー仙台という地域にこだわる理由は?
私は仙台の長町で生まれ育ちました。ずっとこの街で暮らしてきた中で、地域の空気、人の温かさ、そして地元で育まれる文化にたくさんの恩恵を受けてきました。だからこそ「仙台に恩返しをしたい」という想いは、年々強くなっています。
飲食業は、街の風景をつくる仕事だと思っています。特に私たちのような店舗商売は、街にリアルな“場”を創造する立場にある。だからこそ、店づくりを通して、仙台のまちづくりにも貢献していけたら嬉しいですね。
お客様がワクワクし、笑顔になれる空間を増やすこと。それが、最終的に仙台という街の活性化にもつながると信じています。
感謝とチャレンジを胸に
ーー今後、会社としてどんな未来を描いていますか?
まずは今ある7店舗の価値をもっと高めていくこと。そして、ゆくゆくは飲食業に限らず、地域に根ざした別の事業にも挑戦したいと思っています。
また、次世代を担うスタッフたちにもっと成長の機会を与え、「この会社で働いて良かった」と心から思ってもらえるような環境を整えていきたいです。
ーー最後に、大切にしている言葉や価値観を教えてください。
私が大切にしているのは「感謝」と「挑戦」、この2つです。
毎日お客様が来てくださること、従業員が現場で頑張ってくれていること、取引先の皆様が支えてくださっていること——どれも当たり前ではなく、すべて“ありがたいこと”だと思っています。だからこそ、常に「ありがとう」を伝える姿勢を大事にしています。
もう一つの「挑戦」は、過去の自分への反省から来ています。実は学生時代は野球一筋でしたが、振り返ると「もっと挑戦できたな」と思うことがあるんです。だから今は、後悔しないように、どんなことにも積極的にチャレンジすることを意識しています。
最終的な目標は、「ワールドハーツに関わるすべての人が幸せになること」です。社員も、お客様も、取引先も、関わる人すべてが「ここにいて良かった」と思えるような会社でありたい。そのためにこれからも、感謝を忘れず、一歩一歩前に進んでいきたいと思っています。

INFORMATION
株式会社ワールドハーツ
http://world-hearts.com/